フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人 (講談社ノベルス)

フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人 (講談社ノベルス)

ファウスト組(自分の中では佐藤友哉滝本竜彦西尾維新が該当)の中では一番最後に興味を持った作家。ユヤタンの作品で一番はじめに読んだのは「鏡姉妹の飛ぶ教室」なんだけど、確か10ページぐらいで挫折したような気がする。理由はというとパソコンで小説を読むのが耐えがたかったからなのだが、今となっては惜しいことをしたと思う。
ということで初めてまともに読んだ作品になるのは「赤色のモスコミュール」なのだが、これはファウストに載っていたからという理由で読んだわけで、その時ははっきり言ってなんだこの作家よくわかんねーなーと思いつつ、ただ活字欲を埋めるためだけに読んだかもしれないしそうじゃないかもしれない。
あれもしかしてこの作家おもしろくないかと思いはじめたのは、ファウストの夏合宿企画だった。無理矢理要約すると孤島で四肢が不自由な少女が逆ハーレムを作っていたような話だった気がするが、定かではない。多分違う。何はともあれここで佐藤友哉の名を意識しはじめたのだが、あくまで意識したまででわざわざ手を出そうとまでは考えなかった。
革命的なまでに彼へのイメージが変わったのは「チェリーフィッシュにうってつけの日」「小川のほとりで」を目にしたそれ以降になる。敬愛するサリンジャーナイン・ストーリーズをもじったタイトルを目撃して、悠長に構えていられるわけがなかった。サリンジャー好きとしては、どうあっても見逃すわけにはいかない。慌ててこの2作を読み進めた。
ここではじめて「鏡家」は「グラース家」を意識したものだと知り、あっという間に佐藤友哉に夢中になる。サリンジャーには弱い。勿論「鏡家」の名に惹かれただけでなく、その作家性も重要なポイントだ。
「子供たち怒る怒る怒る」の描写には途中本気で吐き気を催したものだが、それでも読まずにはいられない魅力があった。ユヤタンの話は基本的に気持ち悪いと思う。乙一の作品をを読んだ後に手に取ると、多分気分は最悪になる。救いがない。割と死にたくなる。なのに読まずにはいられない。読み終わっても後味が悪いが、半端に読むともっと後味がよろしくない。好き嫌いの二極化が激しい作家の筆頭に挙げたい。
今の私には森博嗣西尾維新に並ぶ敬愛する作家となっている。とってつけたようにメフィスト賞受賞作家ばかりが好きではあるが、他意はない。

要するに佐藤友哉おすすめですよ、という情熱を伝えるためにここまで書いてみたけれど、自分が一番気持ち悪いような気がする。
生きていてごめんなさい。